本記事ではヴィタリの収束定理という,ルベーグ収束定理の一般化である定理およびその証明を紹介します.全体の測度に有限性を課している文献が多いように思いますが,ここでは敢えてそれを仮定しないことにします.
ヴィタリの収束定理
以下,$(X,\mathcal{F},\mu)$を測度空間,$f,f_n\ (n=1,2,\dots)$ をその上の実数値可測関数とします.また,$A \subset X$に対し,$\chi_A$ を定義関数,すなわち$$\chi_A(x):=\begin{cases}1 & (x \in A) \\ 0 & (x \notin A)\end{cases}$$ なる関数とします.さらに$1 \leq p < \infty$ とし,$\|\cdot\|_p$ は $L^p$ ノルムを表すものとします.
準備
まず,ヴィタリの収束定理の主張を述べるにあたりいくつか言葉を導入しておきましょう.
$f_n$ が $f$ に測度収束するとは以下が成り立つことをいう:$$\begin{align}&\forall \varepsilon > 0,\\&\displaystyle \lim_{n \to \infty} \mu (\setdef{x \in X}{|f_n(x)-f(x)|>\varepsilon})=0.\end{align}$$
$\{f_n\}$ が $p$ 次一様絶対連続であるとは以下が成り立つことをいう:$$\begin{gathered}\forall \varepsilon>0,\ \exists \delta>0,\ \forall A \in \mathcal{F},\ \forall n \in \mathbb{N} \\ \mu(A)<\delta \Rightarrow \|\chi_Af_n \|_p < \varepsilon.\end{gathered}$$
$p$ 次一様可積分性は関数の“族”に対しても同様に定めることができます.次にヴィタリの収束定理の主張を紹介します.
定理の主張と証明
$f,f_n\ (n=1,2,\dots)$ を $p$ 乗可積分な関数とする.$f_n$ が $f$ に $L^p$ 収束,すなわち $\displaystyle \lim_{n \to \infty}\|f_n-f\|_p=0$ が成り立つならば以下が従う.
- $f_n$ は $f$ に測度収束する.
- $f_n$ は $p$ 次一様絶対連続.
- 任意の $\varepsilon>0$ に対して次を満たす $A \in \mathcal{F}$ が存在する:$$\begin{gathered} \mu(A)<\infty \quad \text{and}\\ \forall n \in \mathbb{N},\ \|\chi_{X \setminus A}f_n \|_p < \varepsilon\end{gathered}$$
逆にこれら $3$ つの条件が成立しているとき,$f_n$ は $f$ に $L^p$ 収束する.
証明
$f=0$ としても一般性を失わないのでそうする($f_n-f$ を$f_n$ と置き直せば良い).
(1)の証明
$\lambda>0$ を任意に取り,$A_{n,\lambda}:=\setdef{x \in X}{|f_n(x)|>\lambda}$ とおく.$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \mu(A_{n,\lambda})=0$ となることを言えばよいが,これは$$\displaystyle\begin{align}\mu(A_{n,\lambda})&=\int_X \chi_{A_{n,\lambda}}d\mu \\ &\leq \int_X \left(\frac{|f_n(x)|}{\lambda}\right)^p d\mu \\&=\frac{\|f_n\|_p^p}{\lambda^p} \to 0 \quad (n \to \infty)\end{align}$$より従う.
(2)の証明
$\varepsilon>0$ を任意にとる.仮定より,ある $N \in \mathbb{N}$ が存在して $$n \geq N \Rightarrow \|f_n\|_p<\varepsilon$$である.$N$ をこのようなものとしてとる.また,各 $i \in \{1,\dots,N\}$ に対し,$\delta_i>0$ を$$\forall A \in \mathcal{F},\ \mu(A)<\delta_i \Rightarrow \|\chi_A f_i\|_p<\varepsilon$$となるものとしてとり,$\delta:=\min\{\delta_1,\dots,\delta_N\}$ と定める.このとき $\mu(A) < \delta$ なる任意の $A \in \mathcal{F}$ および任意の $n \in \mathbb{N}$に対し $\|\chi_Af_n\|_p<\varepsilon$ となる.
(3)の証明
$\varepsilon>0$ を任意にとり,$N$ を(2)の証明と同様にとる.各 $i \in \{1,\dots,N\}$ に対し,$A_i \in \mathcal{F}$ を $\mu(A_i)<\infty$ かつ $\|\chi_{X\setminus A_i}f_i\|_p<\varepsilon$ をみたすものとする(このような $A_i$ の存在は,例えば十分小さな $\lambda_i>0$ に対して $A_i:=A_{i,\lambda_i}$ を考えることで分かる).ここで $A:=A_i \cup \dots \cup A_N$ とすれば $\mu(A)<\infty$ かつ任意の $n \in \mathbb{N}$ に対して $\|\chi_{X\setminus A} f_n\|_p<\varepsilon$ となる.
逆の証明
$\varepsilon>0$ を任意にとる.(3)より,$A\in \mathcal{F}$ であって $\mu(A)<\infty$ かつ 任意の $n \in \mathbb{N}$ に対して $\|\chi_{X\setminus A} f_n\|_p<{\varepsilon}/{3}$ となるものが存在する.$A$ をこのようなものとする.もし $\mu(A)=0$ なら(3)から直ちに $\forall n \in \mathbb{N},\ \|f_n\|_p<\varepsilon$ が従う.以下 $\mu(A)>0$ として考える.$0<\lambda<\frac{\varepsilon}{3\mu(A)^{1/p}}$ なる $\lambda$ をとる.ミンコフスキーの不等式から$$\begin{equation}\begin{split}\|f_n\|_p &\leq \|\chi_{X \setminus A}f_n\|_p\\&\quad+\|\chi_{A \setminus A_{n,\lambda}}f_n\|_p+\|\chi_{A_{n,\lambda}}f_n\|_p \end{split}\tag{$\clubsuit$}\end{equation}$$である.$A$ の取り方から $(\clubsuit)$ の右辺第一項は $\varepsilon/3$ 未満である.第二項については$$\begin{align}\|\chi_{A \setminus A_{n,\lambda}}f_n\|_p &\leq \|\lambda \chi_{A}\|_p \\&= \lambda \mu(A)^\frac{1}{p} \\&<\frac{\varepsilon}{3}\end{align}$$となる.(2)より $\delta>0$ であって,任意の $n \in \mathbb{N}$ および $E \in \mathcal{F}$ に対して $\mu(E)<\delta \Rightarrow \|\chi_Ef_n\|_p<\varepsilon/3$ を満たすものが存在する.$\delta$ をこのようなものとしてとる.いま(1)より,$$\exists N \in \mathbb{N},\ n>N \Rightarrow \mu(A_{n,\lambda})<\delta$$ が言える.このような $N$ をとる.すると$$n>N \Rightarrow \|\chi_{A_{n,\lambda}}f_n\|_p<\frac{\varepsilon}{3}$$が成り立つ.以上をまとめると $n>N$ に対し,$$\begin{align}\|f_n\|_p &\leq \|\chi_{X \setminus A}f_n\|_p\\&\quad+\|\chi_{A \setminus A_{n,\lambda}}f_n\|_p +\|\chi_{A_{n,\lambda}}f_n\|_p \\&<\frac{\varepsilon}{3}+\frac{\varepsilon}{3}+\frac{\varepsilon}{3}\\&=\varepsilon \end{align}$$となり,逆が示せた.